荒井金七その2
蔵王高湯で修行し、上山で独立開業した荒井金七さんの1寸1分です。形態的には、遠刈田系と共通な小寸特有のコゲス型で、櫻崩しの花が二つ描かれており、花の左側には通常の葉が、そして右側には約束の上山の文字が、緑で大きく書かれています。眉と目は一筆、鼻と口は二筆、金七さんには珍しく甘美な中にもきつい表情となっています。豆こけしゆえの偶然の産物でしょうか、それとも、一筆目がそうさせているのでしょうか。何よりも保存状態のよさがうれしいこけしです。
胴の底は面取りをしており、きれいにかんなで仕上げています。中央に、針で刺したような小さく深い穴があります。轆轤に固型するためについた針穴のようなものでしょうか。
袖珍こけしでは、81番目に荒井金七さんの1寸こけしが予定されていたそうです。中には、81のゴム印が押されているものもあるとういことですが、これにはありません。袖珍こけしの番外品だとすると、昭和18年ころの作品ということになります。しかし、袖珍こけしは、桜崩しの花が三つ描かれているようにも見えます。剛直ともいえる表情からすると、それより早く、16年頃の作かもしれません。
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