宮城県鎌先温泉の佐藤雅雄さんの弥治郎系こけし8寸4分です。雅雄さんは、佐藤勘内さんの長男で、元は鎌先温泉に近い木地集落弥治郎に住んでいましたが、大正中期に父勘内とともに鎌先温泉に移住し、ほぼ同時に木地修行を開始します。このこけしは、昭和15年頃30歳代後半の作と思われます。勘内こけしの渋さこそありませんが、形態的にも、描彩としても安定した作行きです。特に眉のメリハリのある筆の速さを見せる線は、雅雄さんが並々ならぬ描彩力を持った作者であったことを示唆しています。雅雄さんは、昭和22年、43歳で亡くなりましたから、彼の力強さと円熟が重なる頃のこけしを見ることができなかったのが惜しまれます。
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